つらい足のムクミは 下半身(下腹)を温め体質改善することで解消へ!2023/6/13更新
気になるムクミ
夏になると足のムクミでお悩みの方が増えてきます。むくみは血液や体液の循環が悪くり、皮下組織に余分な水が溜まった状態。なぜ、暑い季節に循環が悪くなる?と思われるかもしれませんが、ご自分のふくらはぎを触ってください。ヒヤッとしていたら、冷えて巡りが悪くなっている可能性があります。
この時期の足のムクミは、冷房による足元の冷えかもしれません。冷えている部分は代謝が悪くなっているために、余分な水が溜まりやすくなるからです。
しかし実は、「ムクミ」で悩んでおられる方の多くに共通している体質があります。それは慢性的な下半身冷え。更に、その背景にある下腹冷えの体質です。
ムクミの原因
一般的に身体が浮腫んでしまう理由として、次のような原因があげられます。
■塩分の摂りすぎ・タンパク質不足
塩分を摂りすぎると、過剰に水を身体に取り込んでしまうためにムクミやすくなります。しかし塩分には身体を元気にする働きがあり、減らし過ぎると元気がなくなってしまうことも。
一方で、タンパク質が不足してもムクミやすくなります。血液中の「アルブミン」というタンパク質が水分を調節しており、肉、魚、卵、豆類などのタンパク質が不足するとムクミやすくなるのです。タンパク質は身体の材料になり、元気の源でもあるので、是非不足しないようにしっかり摂りましょう。
■座りっぱなし
事務職などでじっと座る機会が多い生活は、下半身の循環が悪くなりムクミやすくなります。ウォーキングや軽い運動、日常生活でこまめに身体を動かしましょう。
■疲労
疲れが溜まって身体が重だるくなった方はいらっしゃるのではないでしょうか。疲労物質が体内に蓄積することでもムクミを引き起こし、だるい、重いを感じるようになります。
■ホルモンの乱れ
女性の身体は妊娠に備えており、生理の前は体液を溜めこみやすくなります。そのため男性と比べてムクミの悩みも増えがちになります。
■貧血、血が少ない
血液は、鉄+タンパク質でできています。血虚といって血が少なくなると、「アルブミン」という水分調節物質も不足するためにムクミやすくなります。
■腎臓、肝臓、心臓の弱り
腎臓や肝臓、心臓が悪くてもムクミが生じることがあります。
下腹の冷えが慢性的にムクミやすい体質に!
ムクミは血液や体液の循環の悪さから、皮下組織に余分な水が溜まった状態。下半身の循環が悪いとムクミやすくなるのですが、特に下腹の冷えからくる下半身の冷えが、頑固なムクミ体質の原因になっています。
そもそも水の代謝で重要な働きをしている臓器は「腎臓」であり、おヘソの下である下腹にあります。
腎臓は、体液のバランスを調整して尿を作っています。また、血圧を調整したり造血の働きもしています。ですから、腎臓周辺が冷えていると、これらの働きが低下して、尿の出が少なくなったり、頻尿になったり、血圧が上がったりという症状を抱えやすくなるのです。
女性の場合、毎月の生理で血液が下腹部に集まるのですが、冷えていると瘀血(おけつといって、血液ドロドロ状態)を作りやすくなります。瘀血はしつこい冷えを生み出し、冷え⇒瘀血⇒冷え の悪循環から、生理不順や子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣のう腫のような婦人科疾患を生じやすくなります。しかしそれだけではなく、腎臓の働きにも影響を与える可能性があります。実際に婦人科疾患をお持ちの方の多くの方が、ムクミの症状を抱えておられます。
下腹が冷えているからといって、おヘソの上にある「胃」が冷えている訳ではありません。むしろ胃熱があり食欲旺盛で冷たい飲食を好む方が大勢いらっしゃいます。このような方は「冷え」の自覚に乏しく、むしろ上半身は火照っていることが多いため、自分は暑がりだと感じている方が少なくありません。しかし、冷たい飲食を摂りすぎることで下腹を更に冷やし、根深い「下腹冷え」から「下半身冷え」を進行させます。
また、気温が上昇して汗をたくさんかくようになると、冷たい飲み物や食べ物が欲しくなります。そして、素足でのおしゃれや、シャワーだけの生活も増えるようになります。
このように、夏は「下腹冷え」や「下半身冷え」の体質を進行させるさまざまな条件が重なり、それにより足がムクミやすくなってしまうのです。
日常生活でできるムクミの解消法
ある程度のムクミであれば、生活習慣で軽減することができます。
●カリウムの多い食品を摂る
カリウムは、体内の余計な塩分を体外に排出させ、同時に水分も排泄させてくれます。
夏野菜に多く、積極的に摂りたいところ。ただしカリウムには冷やす作用もあり、冷房生活が多い人は温める食材と組み合わせるなど気をつけましょう。
≪カリウムを多く含む食べ物≫
里芋2個(512mg)、ほうれん草1/4束(552mg)、アボカド1/2個(504mg)、
切り干し大根10g(320mg)、納豆1パック(330mg)、バナナ1本(324mg)
※ ※1日に必要なカリウム量:成人男性2,500mg/日、成人女性2,000mg/日
その他:夏ミカン・メロン・キュウリ・スイカ・レタス・パセリ・ニラ・とろろ昆布・
きな粉・煮干し・かつお節・鶏ささみなど
●カフェインを含むコーヒーや紅茶、緑茶、ウーロン茶にも利尿作用があります。
●タンパク質の摂取とバランスのよい食生活
●ぬるめの半身浴
ぬるめの「半身浴」で身体の芯まで温め全身の水分を排出しましょう。身体が冷え
きってしまった時には、入浴前に「温参霊」を飲むと効果アップ!
●適度な運動で血行促進
むくみの薬について
頑固で慢性的なムクミの場合には、生活習慣だけでは改善しないことが多いものです。そこで登場するのがムクミを改善する薬で、大きく分けて西洋薬と漢方薬があります。
【西洋薬】
西洋薬の利尿剤は、血圧を下げるために、また心不全、腎臓や肝臓の働きが低下してムクミがある時に処方されます。飲むと速やかに効きますが、効きすぎて脱水症状や低カリウム血症を起こす可能性もあり、また副作用として、筋力低下、嘔吐、便秘、麻痺、動悸、息切れ、けいれん、めまい、立ちくらみを起こすこともあります。あくまでも医師の処方を必要とする薬であり、ちょっと調子が悪いからといって、用いることはできません。
【漢方薬】
利尿効果のある漢方薬は数種類あり、西洋薬より穏やかですが、副作用の心配が少ないので、一般的なムクミの症状におすすめです。ムクミに限らず、水毒からくる「汗かき」や「めまい」「吐き気」、また「頭痛」「耳詰まり」「鼻詰まり」「膝痛」にも有効です。何だかスッキリしない不調が続くようなら、水毒症状を疑ってみてもいいでしょう。
尚、冷えて血行不良があると、利尿作用の漢方薬を服用してもムクミが解消されない場合があります。冷えて循環が低下していると、穏やかな漢方薬が十分効果を発揮することができないのです。一方で冷えを改善して循環を整えることで、徐々にムクミが軽減される場合も少なくありません。
冷えによるムクミのお悩みに、毎日気軽に継続できる漢方茶&煎じ薬
若い頃には食生活などの生活習慣を見直すことで改善できた体調不良も、年齢とともにしつこく治りづらくなってきます。「ムクミ」や「冷え性」のような長年の体質や生活習慣からくる不調は、自分の努力だけでは治りづらいもの。
「冷え性」に於いても、身体は本来体内温度を一定に保とうとするため、いったん下がってしまった体内温度を上げるには、単純に温めるだけでは難かしくなります。
特に40~50代以降の冷え性は、血液の流れや自律神経、ホルモンのバランスや免疫力といった身体の根本的なことも乱れていることが多いため、身体全体を整えながら身体を内から温めることが大切となります。
このような「冷え性」及び「冷えからくる体調不良」に対して、良質な生薬を組み合わせた「漢方茶」、又「煎じ薬」があります。
文責:漢方薬剤師 大林多津子