冷え性は乳がんリスクが高いの?2017/12/01更新
日本人女性の11人に1人は、乳がんになると言われています。
乳がんに罹患する女性は年々増加傾向におり、現在の日本人女性の乳がん罹患率は、胃がんを抜いてトップになっています。なぜ乳がんはこれほど増えてしまったのでしょうか?まずは「乳がん」という病気を知り、「がん」にならない予防をしていきたいものです。
乳がんについてのあれこれ
乳がん罹患率の実態
※国立がんセンター(現国立がん研究センター)がん対策情報センターによる
女性の乳癌粗罹患率は,1975年以降増加傾向が続いています。2010年の乳がん(上皮内癌を含む)の粗罹患率は,他の癌種に比べ最も高くなっています。(人口10万対115.7人)。
年齢別にみた女性の乳癌罹患率は30歳代から増加をはじめ,40歳代後半でピークを迎え,その後はほぼ一定に推移し,60代後半から次第に減少します。
病院での治療の現状
乳がんの治療法-手術療法・放射線療法・薬物療法があります。
薬物療法には、抗がん薬・ホルモン療法・分子標的薬(抗HER2薬など)が含まれます。
検査方法-マンモグラフィ検査や超音波検査、造影MRI検査などの画像検査。また、針生検による乳がんの性質やホルモン受容体、HER2(ガン遺伝子)などの診断があり、これらの情報をもとに治療方針が検討されます。
○「非浸潤がん」は乳房内にとどまるがんであり、治療の主体は手術療法です。手術で取り除くことで完治すると考えられています。しかし、後に新たな乳がんが発生する場合があるため、手術後に放射線療法やホルモン療法を行う場合があります。
○「浸潤がん」はガンの広がり程度によりステージⅠ~Ⅳに分類されます。手術療法に加えて薬物療法を行う場合が多く、治療後は定期的な経過観察が行われます。ステージにより予後は異なりますので、早期発見が大切といえます。
内分泌かく乱物質について
生体ホルモン作用を起こしたり、ホルモン作用を阻害したりする内分泌かく乱物質。これらは子宮内膜症や子宮筋腫、さらに乳がん発生の可能性が指摘されています。日本では、1998年より環境省で調査研究に取組むようになりました。また、近年、米国やEUにおいても化学物質の内分泌かく乱作用の評価に関する検討が本格的に進められようとしています。
内分泌かく乱物質として疑われている物質
・DES:ジエチルスチルベストロールというホルモン剤。1970年代に流産の防止のため医薬品として使用さていたが、服用した妊婦から生まれた子供の思春期に膣がんが多発した等の健康被害が認められたことから現在は使用されていない。
・DDT:クロルフェノタンという殺虫剤。戦後農薬や害虫駆除剤として使用されたが、その毒性や残留性が長いことから、本邦では1971年に使用が禁止。
・PCB:ポリ塩化ビフェニルという化学物質。耐熱性が優れているため、耐熱絶縁剤や熱媒体として1950年代から使用されたが、その毒性や残留性のため1972年に製造が禁止。
・可塑剤:柔軟性を増し形成加工を容易にする添加剤
・エストロゲン:卵巣の卵胞で作られるホルモンの一種で、思春期発来、二次成長発達、生殖(せいしょく)機能(きのう)や骨代謝維持に不可欠な物質。
※厚生労働省 医薬食品局審査管理課 化学物質安全対策室より参照
ホルモン剤と乳がんの関係
乳がんは悪性の乳腺細胞が異常に増殖したものであるため、女性ホルモンが高い濃度で長時間作用すると、乳がん発症リスクが高くなると考えられています。
①ホルモン補充療法と乳がん
更年期障害の治療法として,減少した女性ホルモンを体外から補充するホルモン補充療法があります。この治療法は更年期障害の症状の緩和には有効性が高いことがわかっています。しかし、危険性の報告も増えており、ホルモン補充療法の治療期間が長いほどリスクは高まると考えられています。
●エストロゲンとプロゲスチンを併用 - 乳がん発症リスク高まる
●エストロゲン単独療法 - 乳がんの発症リスクは高まらないが、子宮内膜がんのリスク高まる。
子宮を切除された場合には、乳がん発症リスクを低下させる。
また,乳がん以外にも,心疾患、脳卒中、 血栓症(けっせんしょう)、 認知症(にんちしょう)などの疾患や症状を増やすことも報告されていますので、更年期障害の症状が日常生活に悪影響を及ぼすような場合以外は勧められていません。
※日本乳がん学会より
②経口避妊薬と乳がん
経口避妊薬(低用量ピル)は,ホルモン補充療法と同様、エストロゲンとプロゲスチンの組み合わせで、日本では1999年に使用できるようになりました。世界的に数多くの研究がなされていますが、経口避妊薬の長期間の服用は、乳がん発症リスクをわずかながら高くする可能性があることがわかりました。
※日本乳がん学会より
③漢方薬のエストロゲン作用について
漢方薬の中に女性ホルモンと同じような作用があると考えられることから、「乳がん」「子宮がん」のような婦人科系のガンの場合には、がん細胞を増殖させるのでは?との心配の声も上がっています。
具体的には、大豆イソフラボン、葛根(かっこん)、高麗人参(こうらいにんじん)、当帰(とうき)・甘草(かんぞう)などが取り上げられています。しかし、婦人病にはこれらが配合された漢方処方が非常に多く、実際に飲むと体調もよくなっています。これらについては賛否両論があり、はっきりした結論は出ていません。
乳がんになりやすい体質チェック
チェック数が多いほど、乳がんになるリスクが高いと考えてよいでしょう。特に、冷え性やストレスは、免疫力低下と深く関わっていますので、早めに改善したいものです。
- □冷え性体質
- □長期にわたるストレス、又は強いストレスを受けたことがある
- □初経年齢が早い、閉経年齢が遅い、出産歴がない、初産年齢が遅い、授乳歴がない
- □高身長、肥満
- □家族に乳がんの人、又は良性乳腺疾患の人がいる
- □飲酒の習慣がある
- □糖質を食べるのが好き(がん細胞が細胞分裂をするときに使うのがグルコース)
糖質は、砂糖・小麦・白米の主成分。がんはそれらのものが大好です。摂りすぎには気をつけましょう。
- □毎朝パンを食べている
「乳がん患者の8割は、朝パンを食べている」とも言われており、パンの「グルテン」には、小腸が炎症を起こして健康問題を引き起こす可能性があるとされています。
- □高脂肪の肉やバターをよく食べる
- □残留ホルモンの多い外国産の安価なお肉をよく食べる
- □乳製品を良く食べることで乳がんになるリスクを高めると指摘する専門家は多いが、リスクを決定づける
証拠は見つかっていない(日本乳癌学会より) - □ホルモン療法
日本乳がん学会によると、ピルやホルモン補充療法が乳がんリスクを高めることはないようですが、
ホルモン療法には副作用があり、その為に乳がんや子宮がん、卵巣がんと診断されたことがある人
は、ホルモン療法を行えないとされています。 - □マンモグラフィやレントゲン、CTスキャン検査回数が多い
冷え性とがん細胞が増えるメカニズム
低体温を好んで増えるがん細胞
がん患者は、例外なく体温が低いと言われています。私達の身体は、実は毎日3,000~5,000個の癌細胞が作られています。しかし、免疫の力によって排除されることで守られています。ところが、体温が低いと免疫力が低下してガン細胞を排除する力が低下するために、生き残ってしまうのです。
健康な人の腋化温度(わきの下の体温)は、平均で約36.5℃。36.5~37.0℃であれば免疫力は旺盛ですが、1℃下回ると内臓の働きが低下し、免疫力が約30%弱まり、ガン細胞が増殖しやすくなります。
免疫力の中心は、血液成分の白血球が担当。白血球には、直接攻撃をしかける顆粒球と免疫の主役ともいえるリンパ球があります。これらはバランスが大事なのですが、「冷え」は顆粒球を増加させ、リンパ球を減少させます。顆粒球の増加は、身体のサビともいえる活性酸素を増やすため病気の原因になります。また、リンパ球の減少は免疫力を低下させるので、病気に罹りやすくなるといえます。
また、腸には「腸管免疫」といって、口から入った異物(最近やウイルス)から身体を守る働きがあります。そこで下腹が冷えていると(腸冷え)、これら「腸管免疫」の働きを弱めてしまうことも考えられます。
免疫力の低下はガンのリスクを高める為、身体を温めて免疫力を高める事が、ガン予防のためには何より大切といえるでしょう。
もちろん、日常的に「冷え性」を自覚している人が、必ずしもガンになるとは限りません。
身体の芯は冷えているのに冷えの自覚は乏しい人、つまり「内臓が冷えている方」や「下腹が冷えている方」の方がリスクは高いといえます。
例えば、下腹を触って「冷たい」と感じる方は、子宮や卵巣、更に大腸や腎臓、膀胱の働きが低下している可能性があります。婦人科系のガンや大腸ガン、泌尿器系のガンのリスクが高いと考えて、早めに下腹の冷えを改善されるとよいでしょう。
お客様の症例
・乳がんの診断から術後、放射線の治療が終わるまで、ガンの人がよく服用される南米の樹木のお茶を服用。
経過が良さそうなので、費用のこともあり、このお茶は中止しました。
・術後4年経った頃、当薬局オリジナルの「冷え取りの漢方茶」が発売できることになり、そこでこのお茶をお試しいただきました。実はそれまで冷え性の自覚は全くなくて、ご本人は「どんな感じになるのかな。」という興味で始められたそうです。ところがそのお茶を飲み始めて、1ヶ月2ヶ月と経つうちに、しつこい汗かきが和らぎはじめ、下半身が温まるのを実感されてきました。
・その後、下腹の冷えをとる「煎じ薬」に変更。しつこく残っていた下腹の冷えが更に温まり、汗かきや下半身の冷え、が更に改善されてきました。そして、ひどかった足のむくみがスッキリしてきたのです。
冷え性の自覚は全くなかったのですが、しつこい「汗かき」や「ムクミ」のお悩みは冷えを治したことで、改善されたのです。
Kさまは、漢方薬以外整体やストレッチもされたそうです。術後に傷口をかばったことから腕の動きが悪くなったためですが、そこで元々の身体の歪みを見直し、更にほぐしきれない身体の奥の筋肉を「ストレッチ」でほぐして背中のハリをとっていかれました。
漢方だけでなく整体やストレッチにもとりくまれたことで、体質改善がよりスムーズにでき、また、それぞれの違いや良さが実感できたそうです。
後日、Kさまから20代の頃のお話しを伺うことができました。実はKさま、若い頃から生理痛がひどくて鎮痛剤を常用され、また、30代半ば頃は強い冷えを感じて厚着をしておられたそうです。
ところが、ある時から冷えを感じなくなり、肩こりも感じなくなり、上半身は暑くて顔から汗をかき、冷たい飲み物やエアコンを好むようになったそうです。ですから、自分は暑がりだと思い込んでいたそうです。
本当は身体がとても冷えていたのに、身体が冷えに慣れてしまい、感覚がなくなってしまったのですね。
「乳がん」という大きな病気に辿り着くには、それ相当の理由があり、身体の抵抗力が落ちていたはずです。冷え性も進行してしまうと感覚がなくなってしまうのです。
とても大変な経験をされたKさまですが、「乳がん」という病気をきっかけに根本からの体質改善に取り組まれ、日頃から気になっていた「汗かき」や「ムクミ」「身体の重だるさ」まで改善することができました。これからは年齢とともに低下する身体を維持され、健康な日々を過ごしていきたいと仰っています。
文責:漢方薬剤師 大林多津子